父娘の日常は続いてゆく 「千と万」3巻(完結)
9月12日発売、関谷あさみ「千と万」3巻の感想です。
シングルファーザーの父・千広と中学生の娘・詩万の相変わらずなふたり暮らし。
待ち望んだ新刊ですが帯にはなんと完結の文字が。勘弁してくれ。
大人になってゆく少女
父・千広視点では、夕飯前にスイーツを食べて夕飯が食べられなかったり、理由もなく不機嫌だったりと奔放な詩万ちゃん。しかし、次話の詩万ちゃん視点でその理由が明らかになる。
好きな男の子が他の娘と付き合っていると知った詩万ちゃん。
学校帰りに買ったモンブランを食べながら泣いてしまう。
泣き疲れて眠ってしまう詩万ちゃんが切なくて可愛い。
親の知らないうちに、男の子を好きになったり、現実を知りひとりで泣いたり、少女が少し大人になる瞬間が愛おしい。
これって夏休みの宿題コピーさせてくれた滝沢さんだよね?
いい子だけど…。詩万ちゃんの方が可愛いのに…。
やっぱり子供な少女
この巻で13歳の誕生日を迎えた詩万ちゃん。バースデーケーキとハンバーグでテンション上がりまくる姿が微笑ましい。
後輩の一年生に見栄を張ったり、ぼろい傘を恥ずかしがったりする所は、「やっぱりまだまだ子供だなあ」と思わせてくれる。
時に大人だったり子供だったりするのが、リアルな思春期女子だなあと感じる。ぼくオッサンだけど。娘もいないけど。
反抗期だけあって、父親に悪態をついたりワガママを言ったりするけど、根っこの部分には親に対する愛情とか思いやりがあって、優しい子なんだろうなというのが伺えるんよね、詩万ちゃんは。だから可愛い!
もっと見ていたかった
この巻で、千広の奥さんは千広よりかなり年上であったことが判明する。
また、千広の妹である那由ちゃんが、恋人を紹介したいと言うエピソードも。
物語はまだまだ広がりそうな雰囲気だが、残念ながら今巻で完結となる。
千広が車を買った話であっさりと幕引き。
もっと詩万ちゃんを見ていたかった。これに尽きる。
もっと詩万ちゃんのいろいろな表情が見たかった。
詩万ちゃんが成長していくのを見守りたかった。
これが父性か。たぶんちがう。
関谷あさみ先生初の一般向け連載となった今作だが、本当に良い作品だった。
どこにでもいそうな、等身大の女子の可愛さがつまっている。
丁寧な心理描写と、ゆるいテンポもとても心地よい。
残念だけど終わってしまったもんは仕方ない。
ぜひまた可愛い女の子を描いてほしい。必ず買うので。